2:苦い思い出(前半)

兄ちゃんは、とてもやさしい人で、僕にはいつも笑顔で接してくれます。
しかし、僕は兄ちゃんには大失敗してしまい子供心に申し訳なく
思っている事がありました。
それは、昨年の秋の事でした。
兄ちゃんは、以前から鳩が飼いたいと、
伝書鳩を飼いたいと、父ちゃんに話していました。
それで、玉葱小屋の一角に大人の人が背を屈まなくていいくらいの
高さの鳩小屋を、兄ちゃんは父ちゃんと協力して作っていました。
兄ちゃんは、手先が器用で、入り口の扉、鳩のとまる所、寝る所
餌場、水場などを上手に作っていました。
外回りの金網は、主に父ちゃんが作っていました。
暫くして、父ちゃんは、知り合いをたずね
白い鳩二羽(オスとメス)、買ってきました。
兄ちゃんは、喜んで、それを父ちゃんから受け取りました。
そして、兄ちゃんは、鳩たちを小屋の中に放ちました。
鳩たちは、小屋の中に放されると、少し狭いようでしたが
すぐ慣れたようでした。
それからは、兄ちゃんが毎日、朝夕、鳩の世話をしていました。
朝は、エサをやり、水も変えていました。
夕方は、主にエサだけやっていましたが、
水もたまに変えていました。
エサ・水をやる時は、入り口の扉を開けて行っていました。
僕は、兄ちゃんがやっていることを、小屋の外からですが
眺めているだけでした。
鳩たちは、兄ちゃんがエサや水を変えている時はおとなしかった。
兄ちゃんが、餌場や水場から離れ入り口の扉を閉めると、
鳩たちは、餌場・水場にきて、エサを食べ、水を飲み
又、自分の好きな場所に行く。
そんな毎日が続いていました。

そして、昨年の秋のある日、兄ちゃんが
「友仁、明日の夕方、鳩に餌をやってくれないか?
兄ちゃん、帰りが遅くなるので、できるよね?」
と、僕に言ってきました。
僕は突然の事だったので、少し驚いたが、
「いいよ! 何とかやってみるよ。]
と、僕は答えてしまった。
翌日の朝、僕は早く起きて兄ちゃんが餌をやり、
水を替えるのを見ていました。
それから、兄ちゃんに餌のやり方を教えてもらいました。
僕は、いつも見ていたことなので全然問題ないと思いました。
「友仁、いいかな?」
と、聞いてきたので、僕は、当然、
「うん、わかった。大丈夫、大丈夫。」
と、答えた。