2:苦い思い出(後半)

その日は、学校が終わると、友達の遊びの誘いも断り、
真直ぐ、家に向かって帰った。
そして、鳩小屋に向かった。
鳩小屋につくと、餌と水の用意をしました。
いつも、兄ちゃんが餌をやっている時間より少し早いが
早く済ませたかったので、まあ、いいか!と思い行いました。
用意した餌と水を入り口扉の所まで持って行き
鳩が中にいる事を確認して、入り口扉を開けようとしました。
その扉は、縦50cm横40cmぐらいなのですが、
それがこの時に限ってか、うまく開けれません。
それで、少し力を入れて引っぱり開けた時、
鳩が急に小屋の中で暴れだしました。
それで、ぼくはびっくりしてしまい、餌も水もひっくり返ってしまいました。
どうしようと思っていた時、なんと、入り口の扉が完全に開いた状態になっていて、
そこから鳩たちが次々と飛んで出ていってしまいました。
あー、どうしよう?と思い、捕まえようとしましたが、
所詮無理です。
鳩たちは、しばらく玉葱小屋の屋根の上にとまっていましたが、
その後、どこかへ飛んで行ってしまいました。
僕は、ぼーとそれを見ているだけでした。
そして、取り返しのつかないことをしてしまったと思い
涙が止めどなくでてきて、泣きじゃくっていました。
それを、母ちゃんとばあちゃんが聞きつけ、僕の所に
来ました。
「友仁、どうしたの?なんで、そんなに泣いているの?
どこかけがしたの?誰かにいじめられたの?」
と、母ちゃんが聞いてきました。
僕は、話そうとするのですが、泣きじゃくっているのと、
気持ちが動転していて、すぐには話せません。
暫く時間が経ち、泣くのにもつかれた頃、
僕は、母ちゃんとばあちゃんに、兄ちゃんが大事にしていた鳩たちを
僕が逃がしてしまった事を話しました。
母ちゃんは、
「兄ちゃんが帰ってきたら、母ちゃんが話すから、
もう泣くのはおよし。」
と、母ちゃんが言ってくれました。
その後、母ちゃんは、父ちゃんにも状況を話してくれました。
父ちゃんも状況分かってくれたようで
父ちゃんは、僕に、
「友仁、鳩は、又、買ってくることはできるから、心配するな。」
と、言ってくれました。

日がとっくに暮れた頃、兄ちゃんが帰ってきました。
兄ちゃんは、鳩が逃げてしまった事を、父ちゃんから聞いたようでした。
その話を聞いお兄ちゃんは、がっくりし、
少し、泣いてもいました。
でも、暫くしてから、僕のそばに来て、
「もういいよ!済んだことは、くよくよしても仕方がない。」
そう言ってくれました
僕は、兄ちゃんに
「兄ちゃん、本当にごめんなさい。」
と、言うのが精一杯でした。
そうして、僕の長い一日が終わったのでした。

翌日、僕は目が覚めると、直ぐに鳩小屋を見に行きました。
兄ちゃんも、すでにいました。
兄ちゃんも僕も、ひょっとしたら鳩たちが戻ってきているのではないか
と思っていました。
しかし、戻ってきていませんでした。
ふと、玉葱小屋の屋根を見ると、そこに、
何羽かの鳩が止まっていて、
灰色の鳩に交じって、白い鳩が二羽いました。
そして、兄ちゃんの方を向いて止まっていましたが、
暫くしてから、他の鳩たちと一緒にどこかへ
飛び立っていきました。
それを見ていた兄ちゃんは、大きく(ふうー)と
ため息ついて、終わったなと思ったようでした。
僕は、兄ちゃんにその時から、申し訳ないことしたと、
悪いことしたと、子供心に思うようになりました。
又、生き物を飼う事の怖さを子供心に知ったのでした。