8:背中の傷(前半)
僕は、いつも、夕方近くになると、ポチと散歩します。
時には、ポチ一人で散歩させます。
一人散歩の時には、首輪からくさりを外してやると、
僕を少し見て、尻尾を振って、喜んで、家の外の道へと
出ていきます。
どこへ行くのか分からないが、又 尻尾を振って帰ってくるので、
どちらかというと、一人散歩が多くなっていました。
その方が、僕も楽なので!
たまには、父ちゃんや母ちゃんが農作業の帰りと一緒になって
帰ってくることもありました。
その時は、父ちゃんや母ちゃんにポチの首輪にくさりを繋いで
貰っていました。
秋も深まってきたある日の事でした。
その日も、いつものように一人散歩させてやりました。
ポチは、いつもと同じように家の外の道へ勢いよく
出ていきました。
暫くしてから、ポチはどことなく元気なく帰ってきたようでした。
いつもは、家の玄関先まで来て、誰かにくさりを繋いでもらうのに、
その時は、自分一人で小屋の中に入ってしまいました。
ぼくは、それに気が付きませんでした。
母ちゃんが、
「ポチ、もう帰って小屋の中に入っているよ!
ご飯やった?」
と言うので、
「まだ、やっていないよ。」
と、僕は答えた。
僕は、ポチのオワンにご飯を入れてやりながら、
「ポチ、いつのまに帰ってきたの?」
と、言うが、ポチはいつものような元気がなく、
オワンの御飯をすぐ食べようとはしません。
僕は、どうしたのかなと、思いながら、
ポチがご飯を食べるのに小屋から出てくるのを
見届けてから、家に入ろうと思っていました。
暫くしてから、ポチはノソリノソリと小屋から出てきました。
ポチは、オワンの御飯をクンクンと嗅いでから、少しづつ食べ始めました。
僕は、
「なーんだ、食べれるじゃないか。」
と、言った次の瞬間、ポチの背中にキズらしきものが見えた。
少し、血がにじんでいたのが、見て分かった。
僕は、
「ポチ、どうしたの?」
と聞くが、当然、犬なので何も答えることはできません。
ポチは、ただ、少しづつオワンの御飯を食べるだけでした。
僕は、母ちゃんに、
「ポチ、背中に何かキズが付いている。少し血も滲んでいる。
どうしよう?」
と、聞いたら、母ちゃんは、
「犬には、人の消毒薬は、つかわないほうがいい。
ほっとけば、治るよ。」
と、言いました。
母ちゃんは、続けて
「どこかの犬とケンカでもしたんじゃない。
そのままにしておけば、又元気になるよ!」
と、言いました。
僕は、そうだなと思い、ポチに
「がんばれよ!」
と、言って 家に入りました。