9:子犬の誕生

ポチのおなかは、日に日に大きくなっていきました。
ポチの散歩の足取りも、だいぶしんどそうに見えました。
しかし、母ちゃんは、
「距離は、少しでもいいから、できるだけ散歩はさせた方がいいよ。」
と、言うので、僕はできるだけ散歩させてやりました。
そして、ある日の早朝、母ちゃんが、
「友仁、ポチ 赤ちゃん産んだよ!」
と、僕の枕もとまで伝えてくれました。
それを聞いて、僕は眠い目をこすりながら、跳ね起きて
ポチの犬小屋まで走っていきました。
小屋に近づき、ゆっくり小屋の中を覗き込みました。
すると、ポチは、
「クウーン、クウーン」
と、鳴いてから、子犬の赤ちゃんを僕の前に、僕が見えるように
赤ちゃんに傷つかないように口にくわえて、
そっと置いてくれました。
ポチは、母親になったことを、赤ちゃんが生まれたことを
僕に見せたかったのだろう。
小さな、小さな、かわいい赤ちゃん3匹でした。
茶色の子犬2匹と白黒まだらの子犬1匹でした。
ポチは、僕に、ご主人様、私の赤ちゃんを見てと、
言っているように思えました。
僕は、ポチに、
「ポチ、わかったよ!よく頑張ったね。
もう、中に入れてあげて。」
と、言って、僕はそーっと小屋の中に入れてあげました。
それから、ポチは子犬たちにお乳をやり始めました。
これから、又 大変になるなと、僕は、僕なりに
思うのと、新たな楽しみも湧いてきました。
それからというもの、僕は、朝起きると、又、学校から帰ってくると
ポチの所に行って、子犬たちを見に行くようになりました。
ポチは、くさりに繋がれている状態ですが、子犬たちは自由なため、
段々、行動範囲が広くなります。
それをポチは見ていて、あまり遠くへ行かないように吠えながら
育てていました。
子犬たちも、ポチからあまり離れないようにしていました。
離れていても、すぐポチの所に帰ってきていました。
しかし、それにも限界があります。
一か月した頃、母ちゃんが子犬を貰ってくれる所を探そうと、
僕に言ってきました。
白・黒のまだらと茶色はオス犬、もう一匹の茶色がメス犬でした。
僕は、近くの友達に話をしました。
母ちゃんも近所の知り合いに話をしてくれました。
それから、1~2週間のうちに3匹全部貰われていきました。
日ごとに、ポチの赤ちゃんがいなくなることに
ポチは、さみしそうでした。
僕は、ポチには悪いけど、これは仕方がないことなのだと思い、
ポチに接していました。
一か月ぐらいすると、ポチは、元のようにすっかり子犬の事も
忘れたようで、元気になり、散歩の足取りも、前のように
歩いてくれるようになりました。
ポチの体も、以前に比べたらほっそりはしているが、
だいぶ大きくなってきていました。
最初、見た時の約2倍ぐらいになっただろうか。
そして、3度目の春になりました。

母ちゃんが、
「友仁、又、ポチ赤ちゃん産むみたいよ。
ポチのおなか大きいよ。」
と、言ってきたので、
「え!そうなの。」
と言って、僕はポチを見に行きました。
ポチは、いつもと同じようにしているが、
やはりおなかが少し大きい感じがしました。
体が前より大きくなっていた為、分かりづらかったのかもしれない。
僕は、ポチのおなかを触ろうとするが、ポチは避けて嫌がった。
僕は、
「まあーしかたないか。又 かわいい赤ちゃん産めよ。」
と、言うだけでした。
そして、数週間後、又、ポチは赤ちゃんを産みました。
茶色と黒、1匹づつ。
今度は、2匹ともメス犬でした。
子犬たちは、その後、すくすく育ちました。