3:出会い(前半)

一は、兄や姉も行っていたこともあり、小学校に入ると、
すぐ 近くのお寺の習字教室に通うようになりました。
そこには、近くの部落の小学生や中学生が
約15~20人くらい、毎週日曜日に集まってきていました。
同級生は、顔も名前も分かっているので、
色々話せるが、上級生には、顔見知りの人しか
話せませんでした。
しかし、一日最後に清書して先生の所に持って行くので
数か月経つと、少しづつ顔も覚え、
名前も分かるようになっていきました。
その中に、2学年上の福井春菜という女の子がいました。
その子は、字がきれいで優しそうな人、
その時は、それぐらいにしか思っていませんでした。

一が小学2年の夏休み前でした。
一の家の西側を流れている川を探検し、上流に上っていくと
一の家の東側の川と一緒になるのがわかった。
その合流地点に行くまでは、
左側は、たんぼ、右側はうっそうとした竹藪でした。

竹藪は、昼間でも薄暗く、涼しい感じで、
時々、蛇やウサギが出てきたりして
少し薄気味悪い所でした。
でも、色々な動物や昆虫を見る事ができるのも
楽しみでもありました。
何度か川を上って探検していると、川の横で
目のくりくりとしたかわいい小さな女の子がいつも
一がやっている様子を不思議そうに、じーと見ています。
一がその女の子が見ているのに気づいた時、
その女の子は恥ずかしそうにしていました。
でも、その女の子は、じーと、一の様子を
あの子は何をしているのかな?と思いながら、
興味津々で見ていました。

何度目かのある日、いつもの女の子が、
一を見ていると、
「由紀子、そんなとこにいると川に落ちて、危ないよ。
もっと、こっちに来て。」
と、言う声がしました。
それで、一は 誰かな?と思い
その声のする方を背伸びして見ると、
そこには習字教室で一緒の
福井春菜ちゃんの姿がありました。
そうか、この子は春菜ちゃんの妹だったのかと、
一は、初めて知りました。

春菜ちゃんとは、部落が違い登校は別です。
下校時、時々一緒になった時でも話すことはなかった。
ましてや、小学校に上がってない由紀ちゃんのことは
知る由もなかったのです。

一は、
「こんにちは、この女の子、春菜ちゃんの妹?」
と、聞いた。すると春菜ちゃんは
「そう、由紀子というの。
一君、これからも、よろしくね!
又、今度、できたら、由紀子と遊んでやってね。」
と、言われた。
一は、
「うん、わかった。
じゃー、由紀ちゃん。また今度会ったら遊ぼうね。」
というと、由紀ちゃんは
「うん。」
と言って、嬉しそうでした。
一は、あの子が由紀ちゃんという事を知って、
又、今度、由紀ちゃんと遊ぶ約束ができたことが
何より嬉しかった。
又、由紀ちゃんの姉ちゃんが春菜ちゃんであれば、
由紀ちゃんも優しい子だろうとも思った。