4:神社探検(1/3)

一は、由紀ちゃんに会いたくて、川探検に何度も行きました。
しかし、行っても会えない時もありました。
何度目かは、わかりませんが、やっと由紀ちゃんが
川のそばに立っていました。
一は、少しびっくりしたのと,ちょっと嬉しい気持ちで
声をかけました。
「由紀ちゃん、こんにちは。
 今日、これから僕と遊ばない。
 すぐそこの神社に行って。」
すると、由紀ちゃんは、
「いいけど、なにしてあそぶの?」
と、返事が返ってきたので、
「とりあえず、神社へ行ってから決めよう。」
と、答えた。
由紀ちゃんは、少し考えてから、
「うーん、いいよ。」
と、言ってくれました。
それで、一は川から上がり、ゴム草履の水を
簡単に手でふき取りました。
一が先になり、二人は大きな杉の木のある神社まで
てくてく歩いていきました。
その神社は、由紀ちゃんの家の所から80mぐらいしか
離れていません。
そこは、どちらかと言えば、由紀ちゃん家の裏庭みたいなものです。
この辺りの部落にある神社は、ほぼ白山神社という名でした。
大きさは、まちまちですが、似たような立て方、配置です。
鳥居をくぐった横をみると大きな木の根元に
いっぱいどんぐりが落ちていました。
見上げると、それはそれは大きな樫の木でした。
少し奥に行くと、少し細長い違った形のどんぐりも
ありました。
一が、由紀ちゃんに
「由紀ちゃん、これ何かわかる?」
と聞くと、
「うん、どんぐりでしょ。春菜ねえちゃんに教えてもらって、
いつもひろっているから。」
という、返事が返ってきました。
一は、
「なあんだ。知っていたのか。」
と、少しがっかりしてしまいました。
「じゃあー、何しようか?」
すると、由紀ちゃんは少し考えてから、
「じゃあー、いつも、一にいちゃんが川でやっているように
この神社のまわりをまわってみるのはどう?」
と言いました。
一は、末っ子なので、由紀ちゃんに、
一にいちゃんと呼ばれて少しうれしかった。
一は、
「じゃあーそうしよう。この神社を探検しよう。」
そして、二人は、神社の周りを歩き始めました。
神社のまわりにもいっぱいどんぐりが落ちていて、
一が、それを拾って由紀ちゃんにあげると、
由紀ちゃんは、嬉しそうに受け取ってくれました。
その時、少し後ろの草の生い茂っている所で
草がザワザワ揺れました。
しばらく様子を見ていると、そこから茶色い野ウサギが
飛び出してきました。
野ウサギは由紀ちゃんの方に近づくと、
由紀ちゃんの顔をじっと見て、すぐに奥の方に行ってしまいました。
その時、由紀ちゃんは、野ウサギに驚くことなく、
野ウサギに、何か、目で合図したように、一には見えた。
突然出てきた野ウサギにびっくりした一は
もう、それ以上先に行くことが怖くなってしまいました。
「由紀ちゃん、今怖くなかった?
 野ウサギが出てきたんだよ。」
と言うと、由紀ちゃんは、
「ううん、ちっともこわくなかったよ。」
と、にこにこして言うのです。
一はこの子は凄い子だなと思いましたが
由紀ちゃんに何かあってはいけないと思い、
その日は、それ以上先に行くことをやめました。
「由紀ちゃん、今日は、ごめん。ここまでにしよう。
また、今度、この続きしよう。」
と言うと、由紀ちゃんは、
少し物足りなさそうでしたが、
一にいちゃんが、また、今度と、約束してくれたので
ここで引き返すことを納得してくれたようです。