4:神社探検(3/3)

暫くすると、先ほど登ってきた坂道の下から何かが
ピヨンピヨン跳ねて、登ってくるのが見えました。
一は、あれは野うさぎか?と思ってみていると
丘側の方に入って見えなくなりました。
一は、下の神社でも見かけたので、ここで見ても
ありうることかと、びっくりしないで眺めていました。
少し時間が経ってから、一は、振り返りながら
「もう帰ろうか?」
と、声をかけた所、由紀ちゃんが見あたりません。
「由紀ちゃん、由紀ちゃん、どこ?」
と、言いながら、そこの社の周りを何度も、探しました。
しかし、由紀ちゃんは、どこにも見あたりません。
一は、えらいことになってしまったと思い
又、必死で探しました。
辺りは、夕闇近くになりだんだん薄暗くなってきました。
一は、ますます怖くなり、由紀ちゃんの姉ちゃんの
春菜ちゃんを呼んでこようと思い、
坂道を転びそうになりながら
降りてゆき、春菜ちゃんの家まで急いで行きました。
一が、ぜいぜいしながら、
「は、は、春菜ちゃん、いる?」
と、声をかけると
春菜ちゃんが、玄関先まで出てきくれました。
「一君、どうしたの?そんなにあわてて!」
と、少し驚きながら、聞いてきたので、一が事情を話したところ、
春菜ちゃんは、落ち着いた様子で、
「由紀は、よく私とそこへ行って遊んでいるから、
そのうち、帰ってくるよ!」
と、平然と言うのです。
すると、案の定、春菜ちゃんと話し終った頃、
由紀ちゃんは、何事も無かったかのように、
にこにこして、帰ってきました。
由紀ちゃんは、一の顔を見るなり、
「一にいちゃん、もう帰ってたの?
由紀は、一にいちゃんがいなくなったので、
しかたなく帰ってきたの。
でも、一にいちゃんも帰ってきていてよかった。」
と、さらっと言うのです。
一は、寿命がすごくちぢまった思いだったので、
急いで帰ってきて助けを呼ぼうとしていたのに!と
心の中で少し怒っていましたが、
何より大事にならなくてよかったとも思っていました。
由紀ちゃんの顔に何かしら茶色い泥が
あっちこっちにうっすらついているのもわかった。
どこかで転んだのかなとも思ったが、
一は、由紀ちゃんのにこにこした笑顔をみて安心した。
一は、まー、いいや。由紀ちゃんの元気な顔を見たからと
思いながら家に帰りました。

「今日は遅かったね。何かあったの?」
と、母に聞かれ、一は、
「うん、由紀ちゃんと色々遊んでいるうちに、
 こんなに遅くなっちゃった。」
としか、答えれませんでした。
その本当の事は、母には言えませんでした。