5:夏祭り(3/3)

それ以来、一が習字教室に行くと、春菜ちゃんが
そばに来て、色々優しくしてくれるようになりました。
習字紙が足らなくなったりすると、春菜ちゃんは、
「一君、私の使って。」
と言って、紙を分けてくれたり、
時には、字の書き方の簡単なアドバイスも
してくれました。
それで、一は習字教室へ行くのが楽しくなりました。
こんな所で、上級生の人に知り合いが
いるという事が心強かったのです。
そして、ある日、習字教室の帰り、春菜ちゃんと
一緒になりました。
春菜ちゃんが
「一君、由紀ね、最近、一君に会えない事、
さみしがっているの。
この間、貰った白いウサギのぬいぐるみ、
すごく大事にしているよ!
また、近いうちに、遊んでやって。」
と言ってきました。
一は、
「うん、わかった。
でも、今まだ少し寒いので、
もう少し、暖かくなったら行くよ。
それでもいい?」
と、答えた。春菜ちゃんは、少し考えてから、
「うん、そうだね。しかたがないね。
由紀に伝えておくわ。きっと喜ぶわ。」
と言い、それぞれの家に帰っていった。

翌週、一が習字教室へ行くと、春菜ちゃんがそばに来て
「由紀に言ったら、すごく喜んでいた。
また、暖かくなったら、遊んでやってね!必ずね!」
とそっと耳元で言ってから、いつものように、
習字を書き始めた。