9:夢枕(後半)
そこには、由紀ちゃんの写真と色々なお供え物が
ありました。
その中に、一が由紀ちゃんにあげた白いウサギの
ぬいぐるみがありました。
春菜ちゃんは、そのぬいぐるみを指しながら、
「由紀は、一君からもらった、このぬいぐるみ、
いつも、いつも、大事にして持っていたの。」
と、春菜ちゃんは、自分の気持ちを
落ち着かせるようにして、続けて話してくれた。
「由紀、このところずっと、体調を崩していたけど、
大分よくなったの。
でも、2週間ぐらい前に、急に容態が悪くなって、・・・」
と、言う春菜ちゃんの話を聞いて、
一は、はっとした。
一は、僕が自転車で転んだ頃ではないか?
でも、あの時、由紀ちゃんはいなかったはずと思い、
何か、不思議でならなかった。
一は、色々な事を頭の中で思いながら、由紀ちゃんの写真を
見ているうちに、涙が止まらなくなってしまった。
それからのことは、はっきり覚えていないが、
春菜ちゃんが、一に寄り添って、家まで送ってくれた。
一は、家に帰って、母に由紀ちゃんが体調崩して
亡くなったことを話したら、母は、
「あの子、もともと体が弱かったようだよ。
でも、かわいそうなことしたね。」
と、言うだけでした。
一は、その夜、由紀ちゃんの事を思いながら寝ました。
すると、先日と同じような夢を見た。
たくさんの蛇が一を追いかけてくる夢です。
すると、目の前に、いっぱい流れ落ちてくる滝が現れ、
滝の近くまで行くと、
滝の上に白い浴衣を着た女の子が立っていて、
一を見つめているのです。
そして、その子は、
「もう、会えないの!
私の分まで生きて!さようなら!」
との言うです。
一は、その子に
「なぜ、そんなこというの?」
と、言いながら一生懸命、手を伸ばすけど、届かない。
そこで夢から覚めました。
一は、夢から覚めた時、あの夢の中の女の子は、
由紀ちゃんではないのかと思うのでした。
そして、一は、由紀ちゃんの分まで、頑張って生きよう
と、強く思うのでした。
もし、また、あの夢を見たら、出てくる女の子に
由紀ちゃん、由紀ちゃんの分まで僕、頑張っているよ!
と言おうと思うのでした。