1:相撲対決(後半)
たまに、ねえちゃんの友達が僕の家に来て、一緒に遊ぶことがありました。
ねえちゃんたちは、ゴム飛び、あやとりなどをやっていましたが、
僕は上手くできません。
でも、ねえちゃんたちは僕に優しくやり方やコツを
教えてくれました。
なので、自然に一緒になって遊ぶようになっていきました。
ある時、家の近くのたんぼに水を入れる水路があり、
少し行くと、水路が二つに分かれている所がありました。
そこは、蛍の出る時期になると、いっぱい飛んでいました。
そこを、ねえちゃんたちはゴム飛びをしている時と同じように
ピョンピョンと簡単に飛んでいきます。
ねえちゃんがやっと跨げる川幅なのですが、僕には
跨ぐことはできません。
当然、飛び越える事もできません。
僕は、ねえちゃんたちがなんであんなに簡単に
飛び越えられるのがうらやましかった。
僕が、そんな顔をして見ていると、ねえちゃんは
「大丈夫。ケンちゃんも、もう少し大きくなったら
できるようになるから。」
と、笑っているだけです。
僕は、その事を、家に帰って、かあちゃんに話しました。
すると、かあちゃんが、
「じゃー、けんちゃん
これから、かあちゃんと相撲をしよう。
ケンちゃんがどれくらいの力があるかみてあげる。」
と言って、広間で相撲をすることになりました。
僕は、相撲はじいちゃんとよくテレビで見ていたから
やり方は知っていました。
僕は、うれしくなって
「よーし、負けないぞ。」
と言って、準備しました。
かあちゃんが、
「はっけよーい、のこった。」
と言って、僕はかあちゃんにぶつかっていきました。
僕は、思いっきり、かあちゃんにぶつかっていったはずなのに、
かあちゃんに簡単に受け止められ、かあちゃんは
「ケンちゃん、どーうや、どーうや。」
と言いながら、僕は簡単に投げられてしまいました。
そこは、かあちゃんなので、手心加えて投げていますが、
僕は、全然、歯が立ちません。
でも、かあちゃんにぶつかった時の感触が
あーこれがかあちゃんの力かと僕の体が感じました。
すると、そこにねえちゃんも帰ってきたので、
「ねえちゃん、相撲やろう。」
と僕は言いました。
ねえちゃんは、かあちゃんに何でこうなったのか、理由を聞いて、
ねえちゃんもやってくれることになりました。
かあちゃんが、
「はっけよーい、のこった。」
と言って始まり、僕はねえちゃんにぶつかっていきました。
すると、やはり僕は簡単に負けてしまいました。
何回やっても、結果は同じでした。
でも、ねえちゃんにぶつかった時の感触は、
かあちゃんとの感触とはまた違うものでした。
しかし、僕はすっかり今の自分の力のなさを
子供心に感じました。
すると、かあちゃんは、
「ケンちゃん、それは、しかたがないよ!
まだ、ケンちゃんは小さいから。
でも、大きくなったら、かあちゃんにもねえちゃんにも
勝てるようになるよ!」
と言って、笑っていました。
僕には、それがいつのことかわかりません。
でも、なんとなく明るい気持ちになっていました。