2:入学準備

「はーるよこい、はーやくこい、
おうちの前の桃の木の、
蕾もみーんな 膨らんで、
はよ咲きたーいと、待っている。」
ねえちゃんが、また 最近 何かをしながら歌っています。
それで、何をやっているのか僕がのぞくと、
それは今度僕が小学校に行く時に持って行く物に
僕の名前を書いていたのでした。
ノートやえんぴつなどすべてに
(おだ けんと) と書いていました。
ねえちゃんは、かあちゃんに頼まれて書いていたのでした。
そして、ねえちゃんは新聞広告の裏側の白い物を集めていました。
ねえちゃんは、僕に
「ケンちゃん、
ケンちゃんの名前を書く練習をしよう。
毎日、10回ぐらいづつ書こうね。
ねえちゃん見ててあげるから。」
と言うのでした。
このことも、かあちゃんに頼まれたことのようでした。
しかし、ねえちゃんは、これは僕に必要な事と
思っていたので、積極的でした。
僕は、もう少しで小学校に行けるという楽しみもあるので、
大変でしたが、毎日頑張って、自分の名前を書く
練習をしました。
しかし、僕は、「お」と「ん」と「と」が、どうしても
上手く書けません。
それを見ていたねえちゃんは、一字づつ、丁寧に
書く時のコツを教えてくれました。
その結果、小学校に入る直前までには、何とか
書けるようになっていました。
僕は、その成果を、かあちゃんに見てもらおうと、
かあちゃんに、
「かあちゃん、
おねえちゃんに教えてもらって
僕の名前、書けるようになったので、見て。」
と言って、新聞広告の裏側の白い物に書いて見せました。
それを見ていたかあちゃんは
「ケンちゃん、
すごいね!頑張ったね。」
と言って、誉めてくれました。
しかし、かあちゃんはねえちゃんから事前に
僕の状況を聞いていたらしく、
僕の上達ぶりを確認するぐらいの感じでした。
でも、かあちゃんはぼくが書いている姿を見ながら
子供の成長も、確認しているようでした。
かあちゃんは、
「ケンちゃん、今度小学校に行ったら
友達と仲良く、又 先生のいう事も
よく聞いてね。」
と言われ、僕は何気なく
「うん、わかった。」
と答えるだけでした。
後で、ねえちゃんに
「小学校の先生って、どんな人。」
と聞くと、ねえちゃんは、
「ケンちゃんの先生は、誰がなるかわからないけど、
色々な勉強、国語や社会なんかを教えてくれる人だよ。
保育園とは、全然違うよ。
怖い先生もいるし、優しい先生もいる。」
と言うのでした。
数日後、ばあちゃん家に行った時、
ばあちゃんに、ポツリと言いました。
「ばあちゃん、今度小学校に行くことになるけど、
僕、大丈夫かな?」
すると、ばあちゃんは、
「何言っとる。ねえちゃんもいるし、近くには
かあちゃんもいる。
だから、何かあったら、かあちゃんの所に行けばいいじゃないか!」
少し、間をおいて、
「でもね、ケンちゃん、みんな同じように小学校行って、
みんな、一人で何とかやってきたから
ケンちゃんも、大丈夫だと思うよ。」
と言うのでした。
僕は、それを聞いて、そうだなと思い少し安心したのでした。