3:水路飛び

そして、僕は、この春から小学校へ行くことになりました。
ピカピカの一年生です。
ねえちゃんや六年生の人が、僕たち同級生の子を
見守りながら、一緒に小学校まで連れて行ってくれます。
僕の歩く早さでは、30~40分ぐらいかかります。
しかし、2~6年生の人たちも僕らに合わせて学校まで
行きます。
僕は、遅れないように、一生懸命みんなについて歩いて行きました。
でも、今の僕にとっては、遠い遠い道のりでした。
又、雨の日は傘をさして歩いていくのですが、
傘も重いし、前をしっかり見てないと、水たまりに
足がはまってしまう事もあるので、大変でした。
しかし、だんだん慣れてくると、少し話しながら歩いて
行けるようになりました。
そして、途中のちらちら見える田んぼの風景、川の形、
渡る橋で、あとどれくらいで学校に着くかも
わかるようになりました。
帰る時は、同級生ばかりになりますが、迷わず
帰れるようになりました。

時々、小川の水路や渡る橋などを見ながら帰ってくる時
ねえちゃんたちが水路をピヨンピョン飛んで渡っていることを
思い出し、あー僕もあんなふうになりたいなと思ったことを
思い出しました。
それで、僕はランドセルを道端に降ろし、一番小さい小川の
水路を選んで飛ぶ準備をしました。
川を飛び越えるかまえをして、
「えい!]
と言って、飛びました。
しかし、反対側の水路の内側に片足が水について
飛び越えれませんでした。
靴はびしょぬれになりましたが、ズボンは大丈夫でした。
ちょうど、ねえちゃんがそれを見ていて、
「ケンちゃん、まだまだだね。
でも、もう少しだったね。」
と言って、笑っていました。
僕は、ねえちゃんに見られていたのは、思いもよらないことで、
恥ずかしかったけど、なぜ、靴がびしょびしょに
なってしまった訳を言わなくても、ねえちゃんは
わかってくれていたので助かった。
家に帰ると、ねえちゃんは、すぐ、僕の靴を
洗って乾かしてくれた。
そして、ねえちゃんは、
「ケンちゃん、
もう少し走る練習でもしてから、
もう一度あの小川の水路、飛んだら。」
と言いました。
僕も、そうだな、いきなりは無理だなと思いました。