9:先生の思惑(後半)
そして、7月初め、図書当番で図書室に言った時、山田先生が
「小田君、今度の夏休みの自由研究、
何か本を読んで、その感想文みたいなものを書くのはどうかな?」
と言ってきました。
僕は、
「そうゆうのでも自由研究になるのですか?」
と聞くと、先生は、
「もちろん、感想文も自由研究みたいな物だから。」
と、言われました。
翌日、野田先生に、昨日山田先生に言われたことを話すと、
野田先生は、
「それもいいんじゃない。
小田君、一度やってみたら。」
と、言われました。
僕は、そうか、じゃーどうしようかと考えました。
でも、なかなかいい案が浮かびません。
僕は、家に帰って悩んでいると、ねえちゃんが
「ケンちゃん、どうしたの。
学校で、何かあった?」
と聞くので、僕は訳をねえちゃんに話しました。
すると、ねえちゃんは、
「そうね。」
と言って、ねえちゃんも考えてくれました。
暫くして、
「ケンちゃん、日本の偉人の物語の本を
読んで、自分の感想を書くのはどうかな?」
という返事がきました。
僕は、なるほどと思いながら考えをめぐらしていました。
そして、とりあえず今度図書室に行って、本棚にある本を
見ながら、考える事にしました。
翌日、授業が終わった放課後、図書室に行って
色々な日本の偉人や歴史の本が並んでいる棚を見ていました。
そして、別の段の所に「小学生の感想文」という本がありました。
僕は、それが急に気になって、その本を手に取って中を見ました。
すると、その中は、だいたい次のような内容が書いてありました。
(1)小学3年生から6年生の感想文
(2)感想文の書き方
(3)学年別推奨本
僕は、なんだこれは、僕が今まさに迷っている所だと思い、
直ぐその本を借りる事にしました。
僕は、小学校に入って、初めて本を借りました。
そして、家に帰って、直ぐ読み始めました。
僕は、読んでいくうちに感想文の書き方の
要領がだんだん掴めてきました。
そして、その中の言葉で、
(形にとらわれず、
自分が感じた事・思った事を
自分の言葉で表現しよう。)
という所に、ますます勇気をもらった感じがした。
そして、学年別推奨本の中を見て、これを参考に
今度、図書室に行って探そうと思いました。
その事を、ねえちゃんに話したら、
「ケンちゃん、それは良かったね。
ねえちゃんも、その事、気になっていたの。
でも、良かったね。そんな本が見つかって。」
と、言ってくれました。
数日して、本を返しがてら、図書室に行きました。
すると、山田先生がいたので、
僕は、先生に
「先生、本借りたいんだけど、
2週間では、夏休み途中になってしまい返せない。
どうすればいいですか?」
と、聞きました。
すると、先生は、
「夏休みの場合は、夏休み明けに返せばいいよ。
但し、その場合は、3冊までだよ。」
と言う返事でした。
僕は、あーそうか、3冊まではいいのかと思い、
「先生、ありがとうございます。
助かります。」
とお礼を言った。
先生は、少し微笑んで、僕を見ていた。
僕は、今まで、山田先生の笑顔を見たことは
全くと言っていいぐらいなかったので、うれしかった。
それから、僕は本棚に並んでいる本を見て、
どんな本があるかを確認しました。
そして、何冊かを候補にして、その日は帰りました。
数日して、夏休みに入る前、
本を借りに図書室へ行きました。
そして、僕は、前候補にしていた本の中の
徳川家康、野口英世、二宮金次郎の本、3冊を借りました。
そして、僕は、一学期最後の日、野田先生に
「先生、僕の夏休みの自由研究、
日本の偉人についてでやってみようと思います。
いいでしょうか?」
と言った。先生は、
「ほー、小田君、
楽しみにしているよ。」
と、返事がきて、僕は
「とりあえず、感想文のようになるかも
しれないけど!」
と、言ったら、
「それでも、いいんじゃない。」
と、先生は、笑顔で軽く言ってくれました。

