3:従弟の家の犬

僕は、正月・春休み・夏休みになると、母ちゃんの在所へ遊びに行きます。
そこには、従弟の三つ上の吉彦君と、五つ上の隆之君がいるからです。
僕は、吉彦君の家に行くと、色々な体験・発見ができる事が
楽しみのひとつでした。

そこでは、夏になると、よくカブトムシやスズムシを飼っていました。
カブトムシは、吉彦君のいえの畑に桃の木や梨の木があるので、
夏になると、その木の蜜を吸いによく集まってくるそうで、
簡単に取れるのだと、吉彦君は言う。
スズムシも、そこに集まってくるそうです。
僕は、大変うらやましく思います。
スズムシは、夜になると、
「リーン、リーン」
と、鳴いていました。
虫かごの中を見ると、10匹ぐらいいました。
カブトムシは、別の虫かごに、こちらにも7~8匹いました。
その昆虫たちは、吉彦君たちが育てていました。
僕が、吉彦君に
「これ、育てるの大変じゃない?」
と、聞くと、吉彦君は、
「全然、大変じゃないよ!ナスやキュウリをやってればいいだけだから。」
と、言うのでした。
(そうか、スズムシやカブトムシは、鳩みたいに大きくないし、
飛んでいかないから、飼いやすいのか。)と思った。
又、吉彦君の家の玄関先に犬小屋があり、犬も飼っていた。
その犬の色は黒色でした。
なので、犬の名前は、犬の色から、(クロ)という名前でした。
5~6歳の雄犬とのことです。
その犬は、僕が近づいても全然吠えない犬でした。
吉彦君のお母さんが、朝・夕、犬の御飯用の器(ブリキ製のオワン)に
ご飯を入れて、犬小屋の前に置きます。
オワンを置かれると、クロはそんなにもガツガツと食べないが、
でも、20~30分ぐらいで食べてしまいました。
そんな、クロでした。
クロの散歩は、吉彦君だけでなく、家の誰かが
朝・夕、くさりでつないだ状態で行っていました。
クロは、最初、少し元気出して歩くが、後半、家がだんだん近くなってくると、
のろのろになってしまうのでした。
でも、どちらかというと、クロはいつも動作がゆっくりしていて
よく寝ている感じでした。
ある時、吉彦君と近くの小川で魚を取ってきた事がありました。
その中の小さな魚をクロのオワンに入れてやりました。
僕は、クロがその魚をすぐ食べるかなと見ていた所、
その魚がオワンの中で、飛び跳ねるのにびっくりして
食べることはなかった。
そんなクロでした。
犬でも、いろんな性格の犬がいるなと、つくづく思った。