5:ポチとの出会い(前半)

数日後、僕はその川の近くのたんぼで農作業を手伝っていました。
父ちゃんが、
「少し、休憩しよう。」
と、言ってくれたので、この時とばかり、僕は、バケツを持って
例の川の水たまりを目指しました。
川の堤防に登って川を見下ろしましたが、やはり川には水は流れていませんでした。
しめしめと、思いながら、例の水たまりを目指しました。
しかし、例の水たまりに近づいたはずなのに、水たまりがみあたりません。
どうしたのかな?と、思いつつ、水たまりのあったと思われる辺りまで
来た時、そこには、魚ではないが、色々な
死骸がまだ黒っぽい、すこし湿った土の上に残っていました。
カラスなどが死んだ魚は食べたようでした。
そこには、見覚えのある、自分が投げ込んだ石も転がっていました。
あーそうか。水が干上がってなくなってしまったのか!
と、少し、がっかりしながら、又、来た道を歩いて、
父ちゃんたちがいるたんぼに戻ることにした。

川の堤防を上り、下りの草道をゆっくり歩いていると、
何かが僕の後をついてくる気配を感じた。
後ろを振り向こうと思ったが、怖くて、少しづつ歩く早さを
上げながら逃げて、やっとたんぼの近くまできた。
僕は、あーよかった、逃げ切ったと思いながら、
そして、恐る恐る後ろを振り向くと、そこには、茶色の小鹿のような
ほっそりした、かわいい子犬が、尻尾を振って立っていた。
なーんだ!子犬かと、心の中でつぶやき、
こんな子犬になんでこわがっていたのかと、自分が情けなかった。
僕は、その子犬を見て、
「こら!あっち行け。」
と、手で追っ払う仕草をするが、ちっとも逃げようとしない。
それどころか、尻尾を振って近づいてくる。
おまえ、母ちゃんや兄弟いるだろ!早くそっちに行って。
心配してるぞと、僕は頭の中で言いながら、
何度も何度も追っ払いました。
でも、その子犬は逃げません
野良犬なのかわからないが、どうして逃げないのか不思議でした。

それから、僕は父ちゃんたちのいる所へ走っていきました。
それでも、まだ、その子犬は僕についてきました。
その後、その子犬は、父ちゃんや母ちゃん、ばあちゃんにも、
おかまいなしに近づいて、全く怖がる様子はありません。
それどころか、初めての人たちなのに、凄く慣れている様子なのです。
僕は、どうしようかと、思案していました。
その時、ふーと!閃きました。
僕は、この子犬、今までの犬と全く違う。
かわいいし、よくなついてくれそう。
一度、この子犬かってみようかと、思いました。
そこで、父ちゃんに、そーっと
「この犬、飼っていい?」
と、聞いたら、
「お前、飼いたいなら、飼ったら!」
と、言う。
母ちゃんに聞いても、
「友仁が、責任もって、育てられるならいいよ。」
と、言ってくれた。
でも、この子犬、飼い主がいるかもしれないから。
そうすると、そちらに行ってしまうかもとも思っていた。
その時、父ちゃんが
「この犬の名前、友仁、おまえが決めろ。」
と、言われたので、僕は、
「うん、わかった。考えておく。」
と、その時は答えた。