7:ポチの能力(後半)

それから、暫くして、夏休みになりました。
毎朝のラジオ体操、昼の水浴び*①、そして、夏休み宿題、
そして、毎日暑い日が続きます。

*①
水浴びとは、この頃はまだ、小学校にプールがない為
小学校が各部落に任せて、川を堰き止めたりして、
小学生に水遊びさせていた行事の事。

僕たちの部落では、西の川で水浴びをします。
各部落(3~4部落単位で)の旗当番の保護者の方が順番で、
何人か出て、水浴びをします。
毎日あるのではなく、期間も決まっていました。
又、雨が降ったりして、増水していたり、川が濁っているときは
泳げませんでした。
僕は、水浴びの時、よくポチも連れていきました。
ポチは川岸のそばで大きな石にくさりが外れないようにして
置いていきました。
僕は、川幅が15~20mぐらいの所を往復して泳ぐことが多かったです。
でも、中ほど辺りは、自分の背丈より深い為足が着きません。
そうゆう時は、必死に平泳ぎかクロールで泳ぎ
岸近くになると浅くなっているので、水の中に顔をつけて、
小石や砂砂利を見つけると、そこで立って、岸の方へと
歩いて上がるようにしていました。
しかし、川の流れも、日々、色々変化するのと、
川底の形も、同様、昨日と今日でも変化があります。
そして、僕は、まだ小さい方だったので、
できるだけ川幅の小さい所を選んで泳いでいました。
その間、ポチはじっとしているか、たまに僕がちゃんと泳いでいるか
探したりもしていました。
ある時、僕がいつものように川を渡ろうと泳いでいました。
その時、たまたま、急に流れが速い所に入ってしまいました。
僕は、泳ぎ切れないと思い、急に引き返そうとしましたが、
余計に流れにのまれ、深みへ体を持っていかれ、手足を
バタバタしてしまいました。
ちょうどその時、どこかの年上の男の子が、僕がバタバタして
溺れそうなのに気が付いて、すぐ川に飛び込んで、
助けてくれました。
すぐ、監視員の人も、それに気づき、年上の男の子と、
僕を岸に上げて、日陰に寝かしてくれました。
僕は少し水を飲んだだけで大事には至りませんでした。
その時、ポチは僕が岸で寝かされるのを見て、
「ワンワン」と急に吠えだして、僕の方へ行こうとしました。
しかし、くさりが大きな石で止めてあるので行けません。
しかし、誰かが、僕の家のポチだと知っていたので、
くさりを、大きな石から外し僕の所まで、ポチを
連れてきてくれました。
すると、ポチは、
「クオーン、クオーン」
と、鳴きながら、一生懸命僕の顔をなめ始めました。
ポチは僕を助けようとしたのか、
僕は少したってから、何かが顔をペロペロ舐めるのに
気が付いて、目を覚ましました。
そうすると、ポチは、僕が目を覚ましたのが分かり、
ペロペロ舐めるのをやめ、少し安心したように
「クウーン、クウーン」と、鳴いていました。
そうして、少し時間が経ってから、水浴びも終わり、
僕は、何事もなかったかのように、家路につきました。
僕にとっては、今日の出来事は大したことではなかったが、
ポチにとっては、気が気でなかった出来事だったかもしれません。