10:急な別れ
僕と母ちゃんは、又、どこか子犬を貰ってもらう所を探しました。
しかし、今度はなかなか見つかりません。
すると、母ちゃんは、父ちゃんと相談しました。
そして、母ちゃんが僕の所に来て、
「友仁、明日、川向こうの保健所に、
ポチたちを連れて行くから、そのつもりでね!」
と、言いました。
僕が、
「どうゆうこと?」
と、聞くと、、母ちゃんは、
「もう、犬たちをもらってもらう所ないから、
保健所にもらってもらうの。
子犬だけでは、子犬がさみしがるから、
ポチも、一緒に貰ってもらうから。いいね!」
と言う。
僕は、ポチと別れるのは、さみしいけど、
そうゆう方法もあるのかと、よくわからないけど
安易に納得してしまった。
しかし、その後、ポチたちがどうなるかまでは、
その時はわかりませんでした。
翌日、朝、母ちゃんが、ポチと子犬の分の御飯を
別々のオワンに入れてくれた。
子犬たちも、もう普通のご飯を食べられるようになっていました。
僕は、それを、ポチたちの所へ持って行きました。
ポチたちは、いつものように食べてくれました。
暫くしてから、母ちゃんは、母ちゃんの自転車の後ろの荷台に
大きめのニワトリ小屋を取り付けた。
その入れ物は、犬たちが、途中で飛び出さないぐらいの
大きさはありました。
その中に、ポチと子犬たちを入れました。
さあ、出発です。
僕も自転車に乗り、お母さんについていきます。
最初は、ポチと子犬たちは、僕も一緒なので、
どこか、楽しい所に行けると思ったのか、
道中、落ち着いていました。
しかし、僕の心中は楽しくありませんでした。
川の堤防道を上り、川にかかった橋を渡っている頃、
子犬たちは物珍しそうに外を見ていました。
しかし、ポチはなんだか急にそわそわし始めました。
ポチは、僕の顔を見ていて、異変に気付いたようでした。
僕も母ちゃんもあまりしゃべらないのでポチ気づいたかもと、
僕は思いながら橋を渡っていました。
橋を渡り、向こう側の下り道になると、自転車は、
少し早く走るようになりました。
しかし、僕は早く走りたくなかった。
まだ、ポチたちと別れたくないという思いが
段々募ってきていたからでした。
しかし、僕は母ちゃんの自転車に遅れないように、
自転車をこいでいました。
しかし、ポチはいよいよ何かがおかしいと気づいたのか、
かごの中でさらに、そわそわし始めました。
僕は、心の中で、(ごめん!ごめん!)と言っていました。
そして、僕は、ポチの顔をじっと見る事が出来なくなっていました。
保健所の門の入り口に、とうとう着いてしまいました。
僕は、保健所という所がどうゆう所なのか、
初めて行く所なのでわかりません。
母ちゃんは、
「友仁、ここで待っていて。」
と言って、母ちゃんは、僕だけ門の所で待たせ、ポチたちを乗せた自転車と
一緒に、中へ入っていきます。
すると、ポチは、僕の方に向かって、、
「ワンワン」でなく、「ウヲーン。ウヲーン」と
寂しそうな大きな叫び声を出し始めました。
(ご主人様、私を助けて、私たちを置いていかないで!)と言っているように
僕には、聞こえました。
しかし、無情にも母ちゃんは、係の人にポチたちを渡し、
空になったかごの乗った自転車で、又僕の所まで返ってきました。
保健所の中には、他にも犬が数匹いるようで、
色々な鳴き声が聞こえてきました。
しかし、ポチの鳴き声は独特で、
「ウヲーン、ウヲーン」と、人が泣いているような声でしたので、
離れていても、ポチの鳴き声だと分かりました。
(ご主人様、行かないで!、私を置いて行かないで!)と、
言っているように、僕には、又、再度聞こえてきました。
僕は、どうすることもできず、又、母ちゃんの空になったかごの
自転車のうしろをついていきました。
川の上り坂の堤防道をゆっくり上り、
又、川にかかった橋を渡っている時、
ポチが呼んでいる、泣いている声が、
僕の耳から離れないことに気づきました。
と、同時に、もうこんな思いはしたくないと思うのでした。
自転車は、川の堤防道を下り始めているのに、
僕の視界には、なにか、スローモーションのような
ぼやけた風景しか入ってきません。
きれいな青空に、色々な形の白い雲がくっきり浮かんでいるのに、
ぼやけてしっかり見えません。
僕の眼から、ただただ止めどなく涙があふれていたのでした。
こうして、僕の小学3年生の5月が過ぎていきました。