5:夏祭り(2/3)
2~3日してから、一は、新聞紙に包んだままのぬいぐるみを
手に持って、由紀ちゃんの家に行った。
運良く、由紀ちゃんは、家の前で一人で遊んでいたので、
一は由紀ちゃんに声をかけた。
「由紀ちゃん、こんにちは。」
と言うと、由紀ちゃんは、びっくりしたのと
うれしい気持ちの入り混じった様子で、
「一にいちゃん、こんにちは。
・・・ どうしたの?」
という返事が返ってきた。
一は、
「あのね、この前、近くの神社で夏祭りがあって、
これ、取ったの。」
と、言って、由紀ちゃんの前に大きな荷物を差し出した。
「それで、これ、由紀ちゃんにあげようと思って、
持ってきたの。」
由紀ちゃんは、その中身が何かわからないので、
「一にいちゃん、中見ていい?」
と、聞いてきたので、一は少し得意気な感じで
「いいよ!」
と、答えた。
由紀ちゃんは、おそるおそる、それを手に取って
あけてみた。
由紀ちゃんは、暫くそれをじっと見て、
それが、白いウサギのぬいぐるみだと分かると、
「一にいちゃん、由紀、これもらっていいの?」
と、驚きながら聞いてきました。
一は、得意げに、しかし、優しく
「いいよ、僕が取ったものだから。」
と、答えると、
「一にいちゃん、ありがとう、本当にありがとう。」
と、由紀ちゃんはぬいぐるみを大事そうに抱えて言いました。
一は、
「これは、由紀ちゃんに貰ってほしくて
頑張って取った物だから。」
と、照れながら言った。
由紀ちゃんは、それは、とてもとてもうれしくなって、
はしゃぎながら、駆け足で
家の中へ入っていった。
暫くすると、春菜ちゃんが出てきて、
「一君、ありがとう。
由紀、前からこうゆうぬいぐるみが欲しいって言ってたの。
ぬいぐるみだったら、何でもいいのだけど、
なかでも、ウサギは、由紀、特に好きな動物のひとつなの。
一君、本当にもらっていいの?」
と言うので、一は
「うん、いいよ。」
と答えると、由紀ちゃんは、暫くして嬉しそうに
「一にいちゃん、由紀、これ大切にする。」
と言った。
その後、一は、なんだか心の中が温かい気持ちに
なるのを感じながら、家に帰りました。