7:白蛇との出来事(後半)
そして、ある時、西の川を探検している時、
一がいつも一緒になって遊んでいる友達たちが
何かを見つけて細い棒を持って、つついていました。
一は、
「どうしたの?何かみつけたの?」
と言って、友達がつついている物を、覗き込むと、
そこにいるのは、蛇でした。
それは、よく見るアオダイショウではなく、小さい白い蛇でした。
彼らは、以前、うちのじいちゃんにヘビで
驚かされたことがあったので、その仕返しのような気持ちで
その蛇を棒でつついていたのでしょう。
一は、それを見て、友達たちの前に行って、
「そんなことしちゃー、だめだ。」
と言って、小さな蛇の上に覆いかぶさるようにして
白い蛇を守りました。
彼らは、
「一ちゃんがそういうなら、まあーいいや。
あとは、任せた。」
と言って、蛇を譲ってくれたので、
一は、彼らに
「みんな、ありがとう、ありがとう。ごめんね。」
と、お礼を言った。
そして、恐る恐る、その小さな蛇を見た。
本当に、細い、長さも25cmぐらいの白い蛇でした。
しかし、彼らに棒でつつかれた為か、暫く
動くことができない蛇に、一は、
「ごめんね!ごめんね!」
と、声をかけた。
暫くして、ようやく蛇の尻尾が動き始め、
頭も少し持ち上げました。
白蛇は、少し一の顔を見てから、順次、体全体を
ゆっくり、くねくねし始めました。
白蛇は、なんとか大丈夫というような顔をしていましたが、
やはりすぐには動けそうにありません。
そこで、一は、近くにあった小さく細長い板切れにそっと、
手を添えながら、乗せようとしました。
白蛇は、最初はいやいやと言っているように抵抗していましたが、
少しくねくねしながらも乗ってくれました。
一は、その板切れに手を添えながら、
「ごめんね!ごめんね!
また、元気になってね。」
と、言いながら、竹藪の中に持っていきました。
そして、平らな日の当たる暖かそうな所を探し、
やわらかい草が生えている所に、そおっと
板切れに乗せたまま置いてやりました。
すると、白蛇は、少し頭を持ち上げて
一の顔をじっと見ていました。
暫くしてから、白蛇は体をくねくねし始めたと思ったら、
スルリスルリと動き出し、竹藪の中に入っていきました。
一は、ほっとして、蛇の消えた方を見て、家に帰りましたが、
家に帰ってから寝付くまで、あの蛇の事が
気になって、気になって、しかたがありませんでした。
あの白蛇、ちゃんと元気になってくれたかなと思いながら、
眠りにつきました。
それから、一は、何度も西の川をさかのぼったが
蛇は全く見なくなりました。
又、由紀ちゃんの家の近くにも行きましたが
由紀ちゃんの姿も見えませんでした。
習字教室に行って、春菜ちゃんに由紀ちゃんの事を聞くと、
春菜ちゃんは、
「最近、体調崩して、家で寝ているの。
でも、元気はあるので、そのうち、また、遊べるように
なると思うよ。
その時は、一君、遊んでやってね!」
という、返事が返ってきました。
一は、そうか、家で寝ているのかと、少し安心した。
又、元気になって、遊べるようになったら、遊ぼうと
思いました。