9:夢枕(前半)
そんなある日、変な夢を一は見ました。
色々遊んでいるうちに、いつものように川の探検を
している情景になっていました。
川をさかのぼっていくと、周りから
いっぱい蛇が出てきて、一を追ってくるのです。
逃げても、逃げても、蛇は追いかけてきます。
命からがら逃げきったと思った時、
どこかで見たような女の子が目の前に立っています。
しかし、その子が誰かはわかりません。
その子が、
「ごめんなさい。もう会えないの。」
と、突然、涙を流しながら言うのです。
一が、
「どうして?なんで?」
と、声にならない声で叫び、その声で夢から覚めました。
なんていう怖い夢を見たのだと、その時は思いました。
ただ、妙に記憶に残る夢でした。
そして、一は、怪我をしてから何週間後に、習字教室に行き、
周りを見渡しても、春菜ちゃんの姿が見えません。
近くの席の女の子に
「春菜ちゃん、どうしたの?」
と聞くと、その子は、
「由紀ちゃん、亡くなって、今日は休むんだって。」
と教えてくれました。
一は驚いて
「由紀ちゃんが、死んだ!?
どうして?どうして?」
と、何度も聞き直しましたが、
その子に聞いても、詳しいことはわからないという。
それで、一は、いてもたってもいられず、習字教室が終わると
直ぐに、由紀ちゃんの家に向かった。
由紀ちゃんの家の前に着くと、
一は、恐る恐る
「ごめん下さい。ごめん下さい」
と、声をかけた。
静かに出てきた春菜ちゃんは、一を見るなり、
「由紀が死んじゃったの!」
と、言って、肩をゆすって、
静かに泣き出してしまいました。
一は、
「え・・・!」
と言って、その後、声を失ってしまいました。
それから、一は、春菜ちゃんに導かれるように、
家の中に入っていきました。